日本にとって私にとって大切な色。

「高貴であり、温かみのある黄味がかった赤色」

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私が思う、今の「日本の色」 vol.001

市川暁子

ファッションコンサルタント
NY在住

市川暁子

ファッションコンサルタント
NY在住

1999年の年末にNYに移り住み、NYを拠点にファッションを軸にアートやデザインなどのプロジェクトを幅広く手がけているコンサルタントの市川暁子さん。世界中の人が集まりカルチャーが生まれる街・NYから考える、今の日本、そして今の日本の色とは?

時間を経てようやくわかった、
いつも身近にある色

日本を外から見て20年、今感じること

NYに暮らすようになったきっかけはなんでしょうか。

 元々は日本でアメリカのファッションブランドの仕事をしていて、出張で初めてNYに行った時はまだ危険な時代でした。その後ジュリアーニ市長(1994年〜2001年までNY市長を務めた)が就任したころからNYが安全な街に生まれ変わったんです。次に訪れた時には街の空気ががらりと変わっていて、街ってこんなにも変わることができるんだ!と、そのエネルギーに魅力を感じて、まずは1年だけ住んでみようと。それが1999年の末。気づけばそれから19年、あっという間ですね(笑)。

オリンピックに向けて盛り上がりをみせる、 いまの日本をどのようにみていらっしゃいますか。

 オリンピックに関してはやはり物理的に離れたところに暮らしているので距離をおいて見ているようなところがあります。私はファッションウィークでコレクションを見るためブラジルをよく訪れていて、リオでのオリンピックに向けてのフィーバーから落ち着いていく様もつぶさに見ていました。東京も同じかどうかわからないですが、盛り上がって終息していくという逆らえない流れというものがあるのかなと。でも日本にとっては大きなイベントでターニングポイントでもあるのは確か。賛成の人も反対の人もいろんな意見があると思いますが、日本の人々がこのオリンピックをポジティブにシェアしていけたらいいなとは思っています。


日本文化がもつ魅力を再認識すること

海外に暮らす市川さんが考える日本という国の魅力は?

 NYに来てからお茶を習い始めたのですが、お稽古にはアメリカ人もいれば日本人、ヨーロッパの人など様々な国の人がいて、日本茶が好きな人もいれば、アートとしてお茶に触れている人もいます。私はこれまでお稽古には洋服で通っていたのですが、今後もちゃんと続けるのであればやはり着物を着なければ、と一念発起して今年のお正月のお茶会に着物で参加しました。こうしてようやく着物の世界に触れて、日本のクラフトのクオリティの高さに改めて感激しましたね。和装の世界って本当に素晴らしい! 美しい! と。私はファッションショーなどでオートクチュール的な技法のコレクションもたくさん見てきましたが、着物の染めや帯の刺繍、帯締めはまさにオートクチュールにひけをとらない素晴らしさなんですよね。今回の帰国では京都の老舗店で初めて草履を誂えました。自分の足の寸法をきちんと採寸していただき、まるでシンデレラのような(笑)、滅多にない体験をさせていただきました。
 日本人ということを意識しすぎるわけではないですが、20年近く海外で時間を過ごし、今自分のルーツについて考えたり、探っていく機会が増えたようにも感じます。海外にいるからこそ、そして年齢を重ねたからこそ考えるようになったのかもしれません。

NYでファッションやカルチャー最新情報に触れながら、 そして日本文化にも目覚めた市川さんが思う”今の日本の色”とは?

 今回特に京都に滞在する間、いろいろと考えていましたが、日本の色と言ったらやっぱり”赤”かなと。 日本の象徴でもある日の丸の赤ももちろんですが、それよりも黄味が入った朱肉の朱や鳥居の赤のイメージです。鳥居は神様との結界であり、神聖なものですよね、京都で見たときに、すごくしっくりきたんです。赤はいろいろな意味で神様につながる色なんじゃないかな、その色こそが日本の色なのではと思いました。
 さらに赤はレッドカーペットのようにラグジュアリーで高貴なイメージもあり、血の色だってそう、ハートを描く時も赤ですし、温かみのある色でいろんな顔を持っているんですよね。個人的にも大好きな色で、エネルギーを感じられるので赤い服もたくさんもっています。自分の名刺もずっと”赤”にこだわって作っていて、だから赤は自分のブランドカラー的でもあると勝手に思ってます(笑)。赤は私にとって一番身近にある色ですが、日本にとっても、人間にとっても大事な色。だから今回の帰国で日本のいろいろなものに触れましたがこの色に行き着いたんだと思います。

これまでも、そしてこれからも市川さんがつなぐNYと日本。

  全世界的にファッション業界でも不況が続き、明るいニュースは少ないですが、その中でもどうやって”新しさ”を出していくかということをみんな常に考えていると思います。私はおかげさまで、これまでさまざまな仕事を通じ、NYで素晴らしい才能のクリエーターたちにたくさん出会う機会がありました。今年は世界的に活躍する現代美術家のリクリット・ティラヴァーニャを東京に招聘し、セレクトショップという商業空間で展覧会を企画したのですが、大盛況のうちに会期を終えることができました。アートギャラリーは敷居が高いと感じているような日本の人々も、ファッションというフィルターを通して作品に対することで、アートの素晴らしさにふれることができたのではないか、と思っています。ファッションとアート、ジャンルは異なりますが、両者は常に刺激を与えあいながら相乗効果を持って、人々を感動させる力を持っていると信じています。これからも、ファッションを軸に、アートや他のジャンルのクリエーターとの交差点になるような企画で、業界に新しい風を吹かせることができたら嬉しいですね。

市川さんにとっての日本の色

「高貴であり、温かみのある黄味がかった赤色」

NOCS 品番 : 7.5R-9-3.0

Profile Akiko Ichikawa

東京女子大学文理学部日本文学科卒業後、日本ではラルフローレンでのPRやマーケティングなどの仕事を手がけ、1999年NYへ。ジャーナリストとしては『朝日新聞』、『VOGUE Japan』、『ELLE DÉCOR Japan』、『花椿』といった媒体で記事を執筆。 書籍に『NYのおみやげ』(2007年発行)、ブラジル人イラストレーター、フィリペ・ジャルジンの作品集『スケッチ&スナップ』(2013年発行。企画、編集)がある。最近はセレクトショップのディレクションやファッション企業を中心としたコンサルティング業務も積極的に行っている。

http://www.originalslope.com/

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