協調性はあるけど個性はない

限りなく白に近い、グレー

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私が思う、今の「日本の色」 vol.20

大山大和

元体操選手、パフォーマー、リバティーリゾート久能山支配人

大山大和

元体操選手、パフォーマー、リバティーリゾート久能山支配人

6歳の頃から17年間体操一筋で世界の頂点を目指し、大学卒業とともにパフォーマーの道へ。海外の舞台に立ち、また跳び箱、トランポリン、バク転の3つのギネス世界記録を持つ肉体パフォーマーが選んだ次なる道は温浴施設の支配人。彼がいま考える、日本の色とは?

世界に出たから気付けたこと

身体表現をしている方にご登場をいただくのは初めてです。競技をしているときに感じる“色”というものはあるのでしょうか?

 そうですね。調子が良い時は薄いブルー、水色ですね。調子が悪い時は濃い赤という感じです。その時は何をやってもこの色なんですよね。

幼稚園の年長から体操を始めて、世界の頂点を目指して戦ってきた大山さんですが、大学の卒業と同時にパフォーマーの道に進まれ、海外での公演に参加され、海外で生活されたことはご自身の人生にどんな影響がありましたか?

 一番には、いろんな点でスケールの大きさを感じましたよね。それと、体操競技をやってきた17年間というのは何をとっても「自分一番」と考えてしまっていたように思います。団体戦もありますが、競技しているのは結局は自分なので…自分のことしか考えられないという感じで。海外でパフォーマンスするようになって、自分以外の仲間のことを考えたりすることができるようになりました。それと、海外のメンバーも少しいて、文化や価値観が違う彼らと時間を共にすることで得たことはとても多いですね。


海外や、さまざまなお仕事を経て、現在は温浴施設の支配人である大山さんが“色”についての質問を受け、どのように考えましたか?

 すぐに最初に浮かんだ色は、限りなく白に近いグレーです。ぱっと見は白なんだけど、よくよく見ると、グレーという感じです。というのは、海外での経験も影響しているのですが、
日本人はやはり個性がないと思うんです。僕は、外国の色というと真っ白のキャンバスやパレットを思い浮かべるんですよ。自分で色をつけて、どんな色にでもなれる。日本人は、なんとなくそう見せているだけのような気がしているんです。だから、真っ白かな?でもよく見たら真っ白じゃないグレーで、個性がなかった…それが日本の色のような気がしています。

よく言われている、日本人の協調性がある=個性がない、という点ですね。

 海外で公演をしたときも、海外の人は、自分がそれを素晴らしいと思ったら、たとえ一人であろうとも拍手をする、立って歓声をくれるんですね。日本の方はやっぱりまわりをみて、空気を読んでしまう。自分の意見や考えがないわけじゃないのにそれに自信を持てていないんですよね。そこを乗り越えないといけないと思っているんです。それとコロナになって、ホワイトだと思っていたことがグレーや、いやブラックだった!なんてことが多発してるじゃないですか、いろいろなところで。このような状況も含めて、そう感じてしまっていますね。

 期待としては真っ白になってほしいと思っています。日本が新型コロナウイルスに打ち勝って、さらに発展していくには、個性を豊かに頑固くらいに自信をもって、と。いまでこそようやく日本もLGBTについての意識があがってきましたが、僕が海外にいたときにはすでに受け容れられる社会がそこにあったんですよね。電子化もそうです。いろんなことに対しての意識や進化が遅れてしまっている。日本人が一番好きではあるので、世界の先頭に立ってほしいですよね。


楽しく明るく、次に向かって

施設での体操教室や従業員など若い方と接する機会が多いと思いますが、どんなことを指導されていますか?

 とにかく、僕は人柄や明るさ、それと自主性を重視して教室も仕事も行っています。こんな時代なので、ユーモアとか楽しいということが本当に重要になってきていると思いますし、なぜこれをやるのか、という本質的な理解をできる人間か否かというのが益々大切だと思うんですね。
自分自身が毎日心がけていることでもありますが、日々、白いパレットでスタートすること。今日は何色に塗ろう!みたいに。人によってもその時によってもみんな色が違っていいと思っているんです。


現在は、リバティーリゾート久能山支配人をされていますが、これまでの経験を活かしてのこれからのヴィジョンとは?

 僕の中ではコロナ前もコロナの今も変わらずやれることをやっています。行く行くはここをテーマパークにしたいと思っています。このリゾート施設には、温浴施設とスタジオやシアター、ライブハウス、テナントが入った町屋があり、敷地は東京ドーム2.5個分です。管理はとんでもなく大変なのですが(笑)これから、町家を公園にして、温泉のほうを遊び主体として、若者がたくさん来てくれるテーマパークにする計画を進行中です。3年後くらいに実現できればと思っていますが、その一歩として、ドッグランを作っていて、次にオートキャンプ場も検討中です。

 イベントも続々と企画中で、「この場所にきたら何かやっているから、とにかく行こう!」と皆さんに思ってもらえるようにしたいと思っています。エンターテインメントで生きてきた経験を活かして、地元の人も、若者もファミリーも皆が集える場所を作っていきたいですね。

大山さんにとっての日本の色

限りなく白に近い、グレー

NOCS 品番 : NOCS N9

Profile Oyama Hirokazu

千葉県生まれ。6歳から体操競技を始め、中学時代は跳馬で全国1位。順天堂大学卒業後、マッスルミュージカルに加入し、国内外でアクロバット・パフォーマーとして活躍。跳び箱24段、1分間トランポリンダンク44回など3つのギネス世界記録を持つ。子どもたちの体操指導に力を入れ、運動を取り入れながら算数を学ぶ学習塾を主宰した後、現在は静岡県にあるリバティーリゾート久能山の支配人として活躍している。

このインタビュイーのご紹介者

和太鼓奏者

はせみきた 様

幼少期から太鼓に触れ、プロとして活動されて約20年の和太鼓奏者はせみきたさん。世界各地での太鼓の演奏やほかのジャンルのミュージシャンとのコラボレーションに挑む傍ら、太鼓演奏の指導や後世の育成も行っています。富士山の麓に稽古場を設け、日々太鼓に向き合っています。太鼓は日本人ならではの精神性を強く反映し、演奏するための身体の鍛錬が必要な楽器です。日本国内、世界各地を演奏しながらみえてくる、日本の色についてお伺いしました。

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ファッションコンサルタント、NY在住

市川暁子

1999年の年末にNYに移り住み、NYを拠点にファッションを軸にアートやデザインなどのプロジェクトを幅広く手がけているコンサルタントの市川暁子さん。世界中の人が集まりカルチャーが生まれる街・NYから考える、今の日本、そして今の日本の色とは?

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